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最高裁判所第一小法廷 昭和47年(あ)159号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人片岡彦夫の上告趣意は、憲法(三七条一項)違反をいう点もあるが、その実質はすべて単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない(兇器準備集合罪が個人の生命、身体または財産ばかりでなく、公共的な社会生活の平穏をも保護法益とするものであること(当裁判所昭和四四年(あ)第一四五三号同四五年一二月三日第一小法廷決定・刑集二四巻一三号一七〇七頁参照)にかんがみれば、被告人の本件兇器準備集合の所為は暴力行為等処罰に関する法律違反の所為に対する単なる手段とのみ評価することはできず、両者は通常手段結果の関係にあるというをえないものであるから、牽連犯ではなく、併合罪と解すべきであって、原判決の判断は正当である。なお、当裁判所昭和四二年(あ)第二二七七号同四三年七月一六日第三小法廷決定・刑集二二巻七号八三〇頁参照)。

よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(藤林益三 大隅健一郎 下田武三 岸盛一 片上康夫)

弁護人片岡彦夫の上告趣意

第一、原判決には、破棄されなければならない重大なる法令の適用の誤りがあり、その誤りは、判決に影響を及ぼすこと明らかであり、破棄されなければならない。

原判決は浦和地方裁判所と同様被告人が兇器を準備して集合したことと、遠山利博に対して暴行脅迫をしたことを以つて、夫れぞれ前者には刑法第二〇八条の二第一項罰金等臨時措置法第二条、第三条、刑法第六〇条を、後者には暴力行為等処罰に関する法律違反第一条、刑法第二〇八条、第二二二条第一項、刑法第六〇条を適用して二罪と評価し、両罪は刑法第四五条の併合罪に該当するとして同条を適用処断している。

然しながら、本件兇器準備集合は遠山に対し暴行脅迫をするためになされた手段であつて、両者の関係は刑法五四条第一項により牽連犯として最も重い暴力行為等処罰に関する法律違反事件一罪として処断されるべきものである。

然るに原判決は(浦和地方裁判所も同様)は、同条の法律の解釈を誤り、二罪として評価し併合罪として処断したのは明らかに重大なる法律の適用の誤りであり、その誤りは、判決に重大なる影響を及しており破棄されなければ、「公平なる裁判を受ける国民の権利」たる被告人の基本的人権を侵害する結果となる。

第二、一罪か二罪かとの法律適用の問題は、「公平なる裁判を受ける国民の権利」に係る問題であり、一罪にせよ、二罪にせよ量刑に、さしたる影響を与えることがないと考えるとすれば、それは、被告人の基本的人権たる「公平な裁判を受ける権利」を軽視するものと云わざるを得ない。

原判決には、右基本的人権を定める憲法の違反があり、破棄されるべきである。 以上

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